精神科・内科を標榜して無床診療所を開業して28年目を迎えました。当初から認知症のひとをみるつもりで意気込んでいましたが、私には開業する前の精神科病院におけるたった1年間の老人病棟における認知症のひとの診療体験しかなく、開業しても、脳代謝賦活剤や抗精神病薬の投与と家族とともに悩むことくらいしか治療の手段はありませんでした。ただ、老人病棟の1年間で感じた「このひとたちは何故ここに居るのだろう?」という素朴な疑問と、その回答にも似た、民間デイサービス“みさと保養所”において軽作業に励む認知症のひとたちの普通の姿への憧れが、私の仕事の原動力と言っても過言ではありませんでした。
当時の医療が取り組める『デイ』の形、重度痴呆患者デイケア(当院では、後に老人デイケア、通所リハビリと変遷)に取り組んだのも早く、開業後3年目のことでした。朝来て、昼間『デイ』で過ごし、夕方家に帰るという、私たちが通勤や通学で長い間親しんだ日々の『生活』のリズムを繰り返すことに意義を感じていました。しかし、そのひとたちも病の進行や合併症、そして老化に伴い、外来や『デイ』に来るのも難しくなっていきます。自然に患家への『出前』も始まり、看取りも行うようになっていきました。必要に迫られ、訪問看護も始めることとなりました。『デイ』をやっていると、薬物を含めた身体の問題が認知機能の悪化やBPSDにつながることを多く知りました。また、『デイ』に来ようとしない人たちへの対応にも迫られることとなりました。そのひとたちにも『出前』をすることになったが、それは医師である私よりは、看護師、OT、ケアマネの方が長い時間をかけることが出来、また長けてもいました。そしてその中には『デイ』に結びつくひともいましたが、結びつかないひとも少なからずいました。それでも彼らスタッフとのつながりは、認知症のひとたちの数少ない社会的交流の機会となっていきました。『デイ』を始めて約10年後、認知症グループホームにも取り組みました。これは、認知症のひとたちの夜の姿を知ることに役立ちました。また、24時間、365日、認知症のひとと『生活』を伴にすることの大変さをスタッフを通して知ることにもなっていきました。
これが、私の認知症のひとの在宅医療の物語であり、『デイ≒通所介護・通所リハビリ・短期入所』による認知症のひとの生活再編成・『出前≒訪問・往診』・多職種協働・『生活』というキーワードが散りばめられているが、この物語は何も精神科医のみが語れるものではありません。ただし、うつ病等の機能性精神障害等の鑑別や合併を治療の効果を見ながら判断すること、非定型抗精神病薬等の向精神薬の適切な使用は精神科医にとっての大切な役割であり、また、「本人の思いや不安に正面から向き合い、時にnarrativeに踏み込んで、本人の行動の意味を探ってそれを治療に役立てること」「家族の心情や家族間の葛藤を知り、家族精神力動に基づいた家族志向的な治療(family oriented therapy)を行うこと」等の非薬物療法は精神科医にとって、力を発揮できる分野と考えております。
当時の医療が取り組める『デイ』の形、重度痴呆患者デイケア(当院では、後に老人デイケア、通所リハビリと変遷)に取り組んだのも早く、開業後3年目のことでした。朝来て、昼間『デイ』で過ごし、夕方家に帰るという、私たちが通勤や通学で長い間親しんだ日々の『生活』のリズムを繰り返すことに意義を感じていました。しかし、そのひとたちも病の進行や合併症、そして老化に伴い、外来や『デイ』に来るのも難しくなっていきます。自然に患家への『出前』も始まり、看取りも行うようになっていきました。必要に迫られ、訪問看護も始めることとなりました。『デイ』をやっていると、薬物を含めた身体の問題が認知機能の悪化やBPSDにつながることを多く知りました。また、『デイ』に来ようとしない人たちへの対応にも迫られることとなりました。そのひとたちにも『出前』をすることになったが、それは医師である私よりは、看護師、OT、ケアマネの方が長い時間をかけることが出来、また長けてもいました。そしてその中には『デイ』に結びつくひともいましたが、結びつかないひとも少なからずいました。それでも彼らスタッフとのつながりは、認知症のひとたちの数少ない社会的交流の機会となっていきました。『デイ』を始めて約10年後、認知症グループホームにも取り組みました。これは、認知症のひとたちの夜の姿を知ることに役立ちました。また、24時間、365日、認知症のひとと『生活』を伴にすることの大変さをスタッフを通して知ることにもなっていきました。
これが、私の認知症のひとの在宅医療の物語であり、『デイ≒通所介護・通所リハビリ・短期入所』による認知症のひとの生活再編成・『出前≒訪問・往診』・多職種協働・『生活』というキーワードが散りばめられているが、この物語は何も精神科医のみが語れるものではありません。ただし、うつ病等の機能性精神障害等の鑑別や合併を治療の効果を見ながら判断すること、非定型抗精神病薬等の向精神薬の適切な使用は精神科医にとっての大切な役割であり、また、「本人の思いや不安に正面から向き合い、時にnarrativeに踏み込んで、本人の行動の意味を探ってそれを治療に役立てること」「家族の心情や家族間の葛藤を知り、家族精神力動に基づいた家族志向的な治療(family oriented therapy)を行うこと」等の非薬物療法は精神科医にとって、力を発揮できる分野と考えております。